ハーモニー・コリン「スプリング・ブレイカーズ」を観て思ったこと

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こないだアマゾンプライムで「スプリング・ブレイカーズ」という映画を観た。
監督はハーモニー・コリン。
かなりゆっくりしたペースで新作を発表している現役のアメリカの映画監督だ。

ハーモニー・コリンと俺との出会いは、KIDS(キッズ)という彼の脚本作が最初だ(ハーモニー・コリン脚本で監督はラリー・クラーク)
話はほとんど覚えていないが、なんとなく洒落たストリート系ティーンのドラッギーなイメージで、これが今かっこいいんだなと思って、当時ティーンの俺は観ていた。

でも次の作品の「ガンモ」を観て、なにかイメージが変わった。
KIDSと同じくストリート感はあるけど、なんか全体的に暗い。
色調はビビッドで明るく、ぱっと見はポップだが、映画の雰囲気は暗い。
竜巻にボコボコにされた後の田舎の町、という舞台のせいもあるが、なんか暗い。
でも画面も音楽もかっこいい、なんだろうこれはと思って、当時結構な衝撃だった。

で、その次の作品「ジュリアン」は、手持ちカメラで画面がブレまくって不愉快この上ない映画だった。
俺はブレた画面を観ていると、すぐ酔って気持ち悪くなるので、こういうドキュメンタリー的な画面がブレまくる撮影手法の映画は死ぬほど嫌いだ。
ラース・フォン・トリアー監督の作品も、内容はどうあれブレまくって酔いまくるので(内容もクソだが)二度と観たくないと思っている。
最近観た映画だと「ヘヴンズ ストーリー」という瀬々敬久監督の映画も酔う映画だった。
4時間もあるくせに、ずっと画面がブレている船酔い映画だ。
どうしようもない感情の表現に、手持ちカメラを使う安易な発想はもう金輪際やめて欲しいと強く思う。
カメラを三脚に載せてくれ!
手持ちカメラの連続に酔って気持ち悪くなる観客(俺)を無視した映画はクソだし、そんな配慮もできないやつ(想像力に欠けるやつ)は映画なんか撮るなと俺は思っている。
今まで言いたくて言えなかったことがここで言えてスッキリした。
というか観客なんかより編集マンが酔いまくると思うのだが、その辺どうなんだろうか。

でも俺は、なぜか画面がブレまくる「ジュリアン」を観て感激し、号泣した。
10数年経って観返したときにも、酔って気持ち悪くなりながら号泣したから間違いない。
色々あるがこれはいい映画だ。と思った。

そういやジュリアンにはヘルツォークが出演していたな。
ヘルツォークは良い、間違いない。

その次は「ミスター・ロンリー」だ
これは駄作だった。
暗い雰囲気はあいかわらず好きだが、あまりうまく行っている感じはしなかった。
何かで読んだところによると、ハーモニー・コリンはこの作品を作った後に、
二度とメジャーでは撮りたくないと言っていたそうだ。
映画全体がなんとなく窮屈な感じで、やっぱこの監督はインディペンデントな作り方が向いてるんだろうなと思った。

そういやミスター・ロンリーにもヘルツォークが出演していた。
ヘルツォークは良いんだ。

で、次は「Trash Humpers」だ
これはハーモニー・コリンの悪意のタガが外れた映画で、クソ不愉快で非道徳的だが、もっとやれと応援したくなるような痛快な作品だった。
道徳を破壊した後にケラケラ笑っている、ピュアを装っているのか本物なのかわからない感じがよかった。
多分この人は賢いだろうから、装ってはいるんだろうけど、でもギリギリのところを表現している気がして、とても良かった。

Trash Humpersにはヘルツォークは出演していない。
そこは残念だった。

それで、やっとこないだ観た「スプリング・ブレイカーズ」の感想だ。
全然面白くなかった。
とてもきれいなショットはいくつかあったが、それだけだったので寂しかった。
なにか、やらされている感が漂う中途半端なクソ作品だった。
20分くらいの短編なら良かったかもしれないが、繰り返されるシーケンスに、時間伸ばし以外の意味を感じとることができなかった。
残念だった。

さらに残念なことに、ヘルツォークは出演していない。

でも俺にとって、クソ映画とクソギリギリの素晴らしい映画を作るハーモニー・コリンは、まだまだ気になる映画監督だ。

「スプリング・ブレイカーズ」が2012年の作品で、もう6年も新作を発表していないのでそろそろ新作が観たいところだ。
もっと世界に対する悪意を見せてくれ。
ドラッグなんかに頼らないで、もっとズブズブに不愉快で暗いピュアな世界を見せてくれ。
と思う。

追記:
と記事を書いてから数ヶ月、ついにハーモニー・コリン再始動のニュースが。
現在新作「ザ・ビーチ・バム」なる作品を製作中とのこと。
題材はなんとムーンドッグ!
ムーンドッグ(Moondog)といえば俺の大好きなミュージシャンの一人だ。
ぱっと聴きとても耳あたりが良いサウンドなのだが、どこか一筋縄ではいかないユーモアのある曲は、ミニマルミュージックの先駆けにもなってたとか。
自作楽器を作ったり、自分のコスチュームを作ったりとなんだかイカしたおっさんなんだ。
それをハーモニー・コリンが映画化するとなれば、これはなんとなく期待してしまうけど、期待は厳禁!

俺はなんだかとてつもなく嫌な予感がするんだ。