本の紹介『どんじり』久里洋二

本 メルカリ

久しぶりに本の紹介です。10年以上前に古本屋さんで購入して、読まずに本棚に眠っていたのを見つけ、読んでからメルカリで売ろうと思いましたが面白かったので売らずにご紹介します。

『どんじり』
久里洋二

著者の久里洋二はアニメーション作家。
エッセイ風に書かれた自伝。
幼少期のエピソードが強烈でした。

久里洋二の兄は2歳の時に染物屋を営んでいた家の染めガメに落ちて口の中まで紺色に染まって死んでしまった。それを見た臨月間近の母親は半狂乱になり失神しそのまま久里洋二を産んだ。
兄が2歳で死んだ日に久里洋二は産まれた。

久里洋二が3歳の時、家の隣に大きな屋敷があった。そこには老女が一人で住んでいて、その屋敷の庭で久里洋二は時折遊んでいた。ある日老女に「ちょっとおいで」と呼ばれて行ってみると、欄間の下に踏み台が置いてあって老女は踏み台の上に乗り欄間に掛けてある帯を首に巻くと「この踏み台を足で蹴ってや」と言う。久里洋二が踏み台を蹴ると、踏み台がはずれて老女の足が久里洋二の頭に当たってひっくり返り、老女は死んでしまい、結果的に自殺の手伝いをさせられる。

久里洋二が中学の時に山に登った。なんとなしに転がした小石が大きな石に当たり、それが転げ落ちて同級生の頭に当たって死亡させてしまった。

久里洋二自身が強烈な印象を受けた体験はこの本の中で何度も出てきます。
幼児の頃にカフェーの女給の膝の上に乗っかった時の女給の股のぬくもりの話。
小学校の時に教師からペコとかラッキョとか熟し柿とあだ名をつけられた話。その教師を殺したい、と書いてあってよっぽど嫌だったのでしょう。

この他にも過酷すぎる体験が語られます。
今思ったのですが楽しかったことがほとんど書かれていない。楽しかったことが無いはずがないので嫌な出来事ばかり覚えているのか、嫌な出来事ばかり書いてしまうのか。
でも暗いとか悲惨な感じがしないのです。